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転居-03

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「ねえ、父さん、部屋の候補は決めたけど、薪拾いってどういう事なの?」 「ああ、この家の暖房のメインは蒔ストーブにするつもりで、もう煙突工事のお願いもして有るんだ、 燃料の蒔は父さんの仲間たちが、先々協力してくれる事になってる、ただ、それはお金を払ってどうという事ではなくてね、ここの森を綺麗にする事と、私達のここでの生活を支えてくれるという感じなんだ。 だから、森が有るからと言って蒔が使いたい放題だとは、美里達に感じて欲しくないんだな。 まずは、お弁当食べてから森を見に行こうか。」 「うん。」 父さんは自然が好きだもんな、毎年キャンプに連れていって…、今年は私が行きたくなくて我儘通しちゃったけど…、詩織は行きたかったんだろうな、でも何も言わないでいてくれた…。 転校したら詩織がいじめられない様にしないと、そして人間の友達を作る手伝いを、ふふ、他人事じゃないわね、私もがんばんなきゃ。 「母さん、お弁当とかの荷物は?」 「まだ車よ。」 「私、取って来る、父さん、車のキーは。」 「開いてるよ。」 母さんは、ここでの生活どう考えてるんだろう、母さんも自然が好きって言ってるけど、ここからじゃあ、お友達に会うとなったら、車で片道何時間? そりゃあ北海道とかに引っ越す訳じゃない、日帰り出来るだろうけど。 う~ん、慣れたら二人でお留守番ぐらい…、出来るのかな…。 「いただきます。」 「おいし~。」 「美里、どうだ、少しは引っ越しの実感とか涌いてきたか。」 「そう言われても…、コンビニまで何分?」 「歩いていくと一時間ぐらい…、いやもっと掛かるだろうな、自転車でも坂道に阻まれるから…。」 「どうして父さんはこんなとこに住もうと思ったの?」 「もちろん、こんなとこだからさ、都会暮らしが便利過ぎて何か大切な事を見失っている気がしていたんだ。」 「でも不便過ぎるのは嫌だな。」 「そんなに不便か?」 「まだ良く分かんないけど…、学校、遠くない?」 「遠い代わりにバスという選択肢も有るし、父さんの出勤に合わせれば、車で送り迎えも有りだぞ。 気が向いたら散歩気分で帰宅なんて事も。」 「なんか微妙だな、そんな気分になるのかしら。」 「父さんの会社は小学校の近くだから、まあ会社と言っても横山社長宅の一階だけどね。 ちっちゃい弟が三人出来たと思って仲良くしてあげてな。」 「弟かぁ~、わんぱくで手に負えなかったら知らないからね。」 「はは、最初にがつんとやって子分にすれば良いのさ、良いか作戦はだな…。」 父さんは何か楽しそうだ、私にとっての弟という事は父さんにとっては息子が出来た様な事なのかな。 新しい仕事に挑戦って言ってた、それも楽しい事なのかな。 でもこんな田舎だよ、寒そうだし、随分急に決まっちゃったから私は心の準備がまだ…、怖いような楽しみなような、でも転校は嬉しいかも、あんな学校二度と行きたくない…。 「美里、どうした?」 「うん、ちょっと…、ねえ父さん、随分急に決まったよね、引っ越し。」 「ああ、早く落ち着いて仕事に取り組みたかったんだ、イベントを企画していてその準備も有る。 美里には迷惑を掛けるけど、そうだな、今まで二人には父さんの仕事の話はあまりして来なかった、まあややこしい話も色々あったからね。 でもここで横山さんと始める仕事の事は二人にも考えて欲しいと思っているんだ。 会社だからお金儲けが目的なんだけど、それだけじゃないって事をね。」 「うん。」 父さんの仕事か…、今まで考えた事なかったな。

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