タイトル:芝居好きな霊 vol.2
(魔女のものがたりです)
登場人物:
川神 梨紗子(カワカミ リサコ) ... R。魔女見習い → 魔女試験十級
開武 千景(カイブ チカゲ) ... 川神 梨紗子のクラスメイト
秘川 新那(ヒカワ ニイナ) ... 川神 梨紗子のクラスメイト
その他 ...
本文:
秘川 新那の後ろについていた霊が、不意に顔を出した。
川神 梨紗子は、それに気付くと魔法のスマートウォッチで時間を止めた。
そして、霊に、秘川 新那の体から出ていくように言った。
しかし、霊は、彼女の言うことを聞かなかった。
霊「悪いけど、ここから出ていくつもりは無いよ。
もっとおもしろいものがあれば、別だけどね」
川神 梨紗子「じゃ、仕方ない。
無理やりにでも出ていってもらいます」
川神 梨紗子は、魔法で、秘川 新那の体から霊を引き離すと、とりあえず、その時、彼女が持っていた”不思議なことが書かれている本”の中に、その霊を入れた。
霊の力は、思いのほか強かった。
霊は、本から出ようとして、本の中で飛んだりはねたりした。
本は、霊が本の中で動くたびに、上に行ったり、下に行ったり、左に行ったり、右に行ったり、大きく動いた。
川神 梨紗子は、必死になってそれを押さえ込もうとした。
しかし、本が、勢いよく飛びはねた時、本は、彼女の手から離れて飛んでいってしまった。
彼女の手から離れた本は、上級生たちが演技の練習をしているステージの上に落ちた。
川神 梨紗子は、勢いあまって転んだ。
そして、そばにあった小道具の先で、彼女の魔法のスマートウォッチのボタンが押され、止まっていた時間が、動きだした。
本の中から、霊が飛び出し、ステージの上で演技をしていた部員の体に入った。
川神 梨紗子「うわっ。あの人の中に入っちゃった。大変なことになるかも……」
川神 梨紗子は、心配したが、そうはならなかった。
その部員の体に入った霊は、彼の体を使って、演技の続きを始めた。
その演技は、素晴らしいものだった。
川神 梨紗子「え……?」
突然、その部員の演技が良くなったので、部長は、彼をおおげさに褒めた。
部長「素晴らしい。君には、才能がある。
まさに、天才だ!」
それを聞いたその部員の中に入っていた霊は、気分が良くなった。
霊は、部員の体から出ると、川神 梨紗子のところに来て言った。
霊「ボクは、やりたいことが見つかったよ。
演技を極めてみたいと思う」
川神 梨紗子「じゃあ、もう新那の体からは出ていってくれるの?」
霊「ああ。その代わり、依り代となるその本は、この部室のどこかに置いていってくれないか?」
川神 梨紗子「うん。いいよ」
秘川 新那「ねえ、誰と話してるの?」
秘川 新那は、川神 梨紗子が見えない誰かと話しているようなので不思議に思った。
川神 梨紗子「え、いえ。べつに」
秘川 新那「あれ。なんで、私、こんなところにいるんだろう。
あ、今度、不思議なことが書かれた本を貸してあげるよ」
秘川 新那は、元の秘川 新那に戻っていた。
川神 梨紗子「ありがとう」
秘川 新那は、持っていた入部届けを破くと、部室から出ていった。
川神 梨紗子は、演劇部の人たちに挨拶をして、その後、霊の縁代となった本を部室の本棚の裏に置くと、部室から出ていった。
あとがき:
フィクションです。
読んでいただき、ありがとうございます。
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